2本のギター


僕が持ってるアコギは中2の時に父に誕生日プレゼントとしてもらったものだ。

誕生日が近付く春のある日、学校から帰って来た僕に父は

「出かけるぞ」
と藪から棒に言った。
言われるままに父の運転する車の助手席に乗り、街へ向かった。

はて、どこに行くんだろうと思っていたら、着いた先はある寂れた楽器屋だった。

所狭しとギターが並ぶ。どのギターもきらびやかに輝いていた。


当時僕は昔、兄のどちらかが学校の出し物で使ったというアコギを押し入れから引きずり出し、エレキは通販で買ったおよそ楽器と呼べないレベルのものを弾いていた。
それでも僕は満足していたし、夢中になってギターをかき鳴らしていた。

ビートルズのジョンレノンが「Love Me Do」でアコギを弾き、間奏でハープを吹くのを映像で見た僕は、それを一人で再現して悦に入っていた。
こともあろうに僕はアコギにストラップを着けておらず、ガニマタでジョンの真似をして、ギターはベルトのバックルに固定していた。
間奏でハープを吹く。
ギターが落ちて、ペグという弦を巻く部分が折れた。
当たり前だ。

しばらく甲子園の決勝で負けた球児のようにうずくまっていた。
自分の愚かさと情けなさに果てしなく恥ずかしかった。


そんな事件が起きた矢先の楽器屋だった。

父は店に入るなり、「好きなの選べ」と言い放った。

先の事件を知り、悲しみに打ちひしがれていた息子を不憫に思ったのだろう。

感情を上手く伝えられない生粋の九州男児の父はそういう風にしか言えないのだ。

僕が選んだのは、黒のボディに星のポジションマークのアコギだった。他人が使うようなものには興味がない、その頃からそうだった。ギターを始めたのもそうか。

父の予算は少しオーバーしたらしかったが、自分に似て一度これと決めると曲げない息子にそのギターを買ってくれた。
ギブソンの子会社のエピフォンというメーカーで、ランクとしては劣るのかもしれないが、僕はさらに夢中になってそのギターを弾いた。
ストラップもちゃんと着けて。


エレキは3本所有しているが、かれこれ10年近くアコギはこれ一本だった。

ストリートもステージも作曲も、アコギはこいつだった。

後になってそれが「エヴァリーブラザーズモデル」ということを知り、かのポールマッカートニーも弾いていたことを知った。

しかし、ステージで使うにはいささか何点かの支障があった。


そして今日、初めて「自分のお金でアコギを」買った。


ずっと欲しかったTaylor社のアコギ。

今の僕に必要なものだった。


だけど、僕が父からもらったギターを弾かないわけじゃないよ。

きっとこれからも弾くだろうな。

弾けばいつでも、無我夢中であのギターを弾いてた頃に戻れるからさ。


今の僕の原点みたいなものさ。



うたうたい堺輝

うたうたい堺輝の綴るしょーもないアレコレや ライブスケジュールなど

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