なくして気づくもの

便利さに慣れてしまうと
いざ、何かがなくなった時、

人は途端に不便さを主張し
不快感をあらわにする。


文明の利器は
そういう抗議とともに成長し

人の生活になくてはならないものになってゆく。



例えば携帯電話。
例えばテレビ。
例えば傘。



そして、今日
僕はお風呂に入って


洗面器がないと
ろくに体も洗えないことに気がついた。


体に湯をかけることも
顔を洗うことも

泡のついた手を
湯船につけることなく
体の泡を流すのも

いつものあいつがいたからこそ
出来ていたことなのだ。


文字通り丸裸だ。
洗面器がないと
僕は風呂にも入れやしない。


手のひらですくった湯は
肩を濡らすのに精一杯で

指の間から流れ落ちる湯は
僕の人生そのものだ。



その前に
入る前に沸かしていたので、


熱い湯が風呂桶の
水面に集まり

手をつけること能わず。

混ぜることすら出来ない。



なんて僕は無力なんだ、と。





だが、しかし

こうも気がついた。














シャワーあるじゃん。






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